ダム名 小河内ダム (おごうちだむ)
形 式 重力式コンクリート 多摩川水系多摩川にかかるダム
所 在 東京都西多摩郡奥多摩町 Yahoo地図
目 的 上水道、発電 管理 東京都
印象(5段階) 眺望(5段階) 観光(5段階) 交通(3段階) 堤 体 積 1,676,000 m3
☆☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆ 総貯水容量 189,100,000 m3
着工年 1936年 堤 高 149.0 m 有効貯水容量 185,400,000 m3
竣工年 1957年 堤頂長 353.0 m 体 積 能 力 112.8281623
着工→竣工期間 21年 縦横比 2.37 体積有効能力 110.6205251
関連リンク 日本ダム協会 ダム便覧”小河内ダム”  

上記表は日本ダム協会のホームページにある”ダム便覧”を参考に作成されています。
縦横比=堤頂長/堤高 この数値が大きいほど横長です。1より小さいと、いわゆる縦長ダムです。
体積能力=総貯水容量/堤体積 1m3の堤体材料でどれだけの水を支えているかを表す数値です。
                       この数値が大きいほど、少ない堤体材料で多くの水を支えていることになります。
                       体積有効能力は有効貯水容量で割った数値です。
縦横比、体積能力、体積有効能力は私の個人的な興味で割り出した数値であり、土木の世界で使われているものではありません。
着工→竣工期間は着工、竣工年の単純な引き算しかしていません。着工、竣工ともに年度での数値なので実際の期間とは誤差があります。


≪小河内ダムのある町の紹介&ダムまでの道≫
 奥多摩町は東京都の最も西側に位置する山林に囲まれた町です。自然を目当てにドライブやハイキングなど観光資源が豊かな一方で、都心から町へのアクセスが国道411号線のみということで渋滞の思い出もあるところです。
 小河内ダムへのアクセスは、国道411号線で都心から向かうルート、檜原村から県道206号線で向かうルート、山梨県側から向かうルートと、いずれの道も山道で注意を要しますが、ダムから檜原村へ抜ける道は二輪車通行止めなので要注意です。


≪小河内ダム インプレッション≫
 堤体本体には洪水吐を持たないシンプルなダムです。東京都の水がめとして比較的認知度が高く、堤高も149mもあることで十分な存在感を備えたものですが、残念なのは小河内ダムという名称よりも奥多摩湖の名称のほうが一般的なことです。
 ダム下流側の襟の部分が真っ白で、展望塔とも相まってシンプルながら特長的な飽きのこないデザインです。
≪小河内ダム ポイント≫
【日本一の非越流式重力式コンクリートダム】
 堤体本体に洪水吐を持たないタイプのダムとしては、重力式コンクリートダムとしては日本一の堤高を誇ります。アーチダムも含めると奈川渡ダムについで二番目となります。洪水吐をダム本体に持たないことで同規模のダムと比べてスリムに見えるのが特徴的です。(画像をクリックすると拡大されます)
 対照的なのが神奈川県の宮ヶ瀬ダム。本体の洪水吐が天端側水路式のために天端幅が大きくとられています。堤高も高いこともあり、天端が大きい分土台部分も大きくとる必要があるために鈍重になります。予断ですが、天端が重たいと耐震性において不利になります。


 本堤にはゲート類はありませんが、取水管が二本あります。一方は多摩川第一発電所取水管ですが冬〜春に使われます。もう一方は渇水時に取水するための第一号取水設備取水管です。また本堤左岸側には余水吐があります。こちらは5門で毎秒1500立米の放流能力があります。さらにその左岸側には第二号取水施設があり、施設の上はヘリポートにもなっています。選択取水が可能な設備で、夏〜秋まではこちらから取水します。(画像をクリックすると拡大されます)
 上流側から見た本堤。天端がすっきりとしていて横長の印象を受けます。取水設備も本堤にある第一号取水設備取水管と多摩川発電所取水管、さらに離れたところに第二号取水施設があるために、網場は完全に川を横断する形で長く張られているのが印象的です。

 ダムの脇には水と緑のふれあい館があります。ダムに関する資料や奥多摩の歴史等について知ることができます。レストランもあり奥多摩の名産品等のお土産も充実しており、このダム界隈で家族連れで一日楽しむことができます。
 余水吐。5門のローラーゲートで構成されています。最大1500立米毎秒放流することが可能です。左端に東屋があり、その大きさを比較することができます。一門の横幅はおよそ10mほどあります。

 余水吐の下流側。放流された水はゲートから100mほど行ったところでストンと落ちて減勢工に流れ込みます。おそらく地山の形を生かした結果、このような個性的な余水吐を作り出したものと思われます。
 余水吐は下流側からも見ることができます。減勢工には余水吐から放流された水と隣の沢の水、そして第二号取水設備からの水を放流するバルブも設置されています。

 余水吐の脇にはダム管理所があります。取材した日はダム見学会が開催されていたため、普段は入れない管理所の中に入ることができました。
 ダムの右岸側には慰霊碑があります。このダムにおいては87名もの方が犠牲になられたそうです。ちなみに同時期に建設された佐久間ダムでも96名もの犠牲者がいました。小河内ダムも佐久間ダムと並ぶ難工事であったことがうかがえます。

 右岸側からみた第二号取水設備。右岸の道路から見るとヘリポートが見えますが、その下には取水設備があります。選択取水ができるので夏場は表層の温かい水を取水して発電所に水を送ります。
 右岸側からみた本堤。下流側の傾斜がついている部分と垂直の壁の部分でコンクリートの色が極端に変わっています。経年変化が襟のようなデザインを生み出しています。

 本堤直下には多摩川第一発電所があります。発電所で使用した水は本堤直下の水じょく池で水の勢いを殺してから、多摩川に放流されます。一部の水は水じょく池から東京発電の氷川発電所へと送られます。発電所の右側に沢をまたぐように水圧鉄管が見えますが、第二号取水設備から来たものです。写真の右側から左側の発電所へと水が送られるので、川の流れに逆らっているようで不自然に思えます。
 下流側の様子。写真の左上にある茶色いものがサージタンクです。第二号取水設備から来た水は、ダムの左岸側からダムの下流側へと一度回りこんで多摩川第一発電所へと送られます。このような水の迂回が行われた一つの理由は、第二号取水設備が後から付けられたために起こりました。ダム建設当初は選択取水ができずに水深の深い冷水を多摩川に流していたため、農作業への害が起こるようになりました。それによって後から第二号取水設備が建設された経緯があります。

 余水吐あたりは水深が浅いために、水の底を覗き込むことができます。魚が泳ぐ姿も見ることができます。台風等で大水は来たときは別ですが、普段はそのままでも飲めるほど水がきれいであるとのことです。
 小河内ダム竣工50周年記念行事として小河内ダム施設見学会が2007年の夏に開催されました。朝10:30ごろに現地入りしましたが、見学スタート時間は15:30ということで随分待たされました。最初に小河内ダムの概要を管理所内の会議室で聞いてから、ダム下流側へと移動する段取りです。

 この水圧鉄管は多摩川第一発電所取水管です。選択取水されないために冬場にしか使われません。最大21.5立米毎秒の水量で最大19000KWもの電力を生み出します。生み出された電気は東京電力に売電しているとのことです。
 発電建屋全景。写真右端に人が立っているのと比較してもかなり大きな建物であることがうかがえます。普段はこの発電所には人はおらず、遠隔で制御されているそうです。

 直下から見上げた小河内ダム。写真では大きさが伝わらないのが残念です。水じょく池に向けてバルブが向けられていますが、これは本堤にある第一号取水施設取水管から取られた水が放流されます。この取水管は渇水になったときに使われますので、ここからの放流は滅多に見ることができません。
 水じょく池で水の勢いが殺されてから多摩川へと放流されます。いわゆる減勢工になるのですが、水じょく池という言い方は他では聞いたことがありません。写真の右上には暗渠が見え、ここから氷川発電所へと送られます。

 第二号取水設備。左岸側の道路からヘリポートに見える設備がまさしく第二号取水設備になります。当然のことながらヘリポートの上には立ち入ることができません。
 左岸側に小高いところからダムを見渡せるところに道路がありました。かなり狭小な道路で、近隣の方の生活道路となっているのであまりお勧めはできませんが、良い眺めでした。

 東京発電の氷川発電所です。奥多摩第一発電所で放流された水の一部は、この発電所へと送られます。元々はこの発電所を買収して奥多摩第二発電所とする予定でありながら、水利権の問題で結局買収しなかった話を聞いたことがあります。従って多摩川第二発電所という名称の発電所は存在しません。
 檜原村から奥多摩湖へと抜ける道から偶然にもダムを見下ろせる場所がありました。この道路は二輪車では一方通行(ダムから檜原村へ抜ける方向へは通行止め)のため要注意です。

 小河内ダムを下流から眺められる場所は普段は立ち入り禁止です。夏休み等でなんらかのイベントを東京都水道局が行う可能性がありますので、その時を待ちましょう。






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